セラピストとして、不登校や家庭の悩みを聞いている中で、ゲーム依存が心と体に深刻な影響を及ぼしているケースを頻繁に目にします。学校に行けない、家族関係が悪化する、将来への不安が募る――そんな状況を改善し、前に進むためには何が必要なのでしょうか?今回は、依存症の危険性を分かりやすく解説し、復帰をサポートしたケースをもとに解決策をお伝えします。
ネット依存とゲーム障害:日本における現状
厚生労働省の2017年の調査によると、ネット依存が疑われる中高生は全国で推計93万人にのぼり、これは7人に1人に相当します。このネット依存の中には、ゲーム障害も多く含まれています。これらの子どもたちの多くは、学校生活や家庭環境に支障をきたしていることが報告されています。
ゲーム障害は大人にも見られますが、特に10代の子どもたちに増加している点が深刻です。
WHOが認定した「ゲーム障害」とは?
2019年、世界保健機関(WHO)は「ゲーム障害(Gaming Disorder)」を新たな疾病として国際疾病分類(ICD-11)に追加しました。ゲーム障害は、以下のような特徴を持つとされています:
- ゲームへの過度な没頭:ゲームをする時間をコントロールできなくなる。
- 日常生活への悪影響:仕事や学業、社会的な活動、家族関係などが著しく損なわれる。
- 症状の持続性:こうした状態が12か月以上続く場合に診断されることが多い。
この認定は、ゲーム依存が単なる「趣味の延長」ではなく、医療的な介入が必要な深刻な問題であることを示しています。
子どもに多いゲーム依存の症状
ゲーム障害が進行すると、以下のような症状が見られることがあります:
- 生活リズムの乱れによる昼夜逆転
- 学校に行けなくなる
- 睡眠不足や集中力の低下
- 嘘をつく、イライラしやすくなる、怒りっぽくなる
これにより、家庭内での親子関係や兄弟との関係が悪化し、友人関係にも影響を及ぼします。このような状態が続くと、子どもの心身の健康だけでなく、将来の可能性にも深刻な影響を与えます。
ゲーム依存による脳の機能低下
ゲーム依存は脳に深刻な影響を及ぼします。特に以下のような機能低下が報告されています:
- 前頭前皮質の機能低下:意思決定、注意力、衝動のコントロールを担う前頭前皮質の活動が弱まり、自己コントロールが難しくなります。これにより、じっくり考えたり、自分の課題に向き合ったり、建設的な未来を計画する力が弱まります。その結果、依存がさらに悪化する悪循環に陥る可能性があります。
- 報酬系の過剰刺激:ゲームはドーパミンを過剰に分泌させるため、脳が「もっとゲームをしたい」と感じるようになります。この過剰な報酬系の刺激は、他の活動への興味や意欲を低下させます。
- 記憶力と学習能力の低下:ゲームに依存すると、脳の灰白質が減少し、記憶や学習に必要な神経回路の効率が落ちる可能性があります。
- ストレス耐性の低下:ゲーム依存による長時間のストレス刺激は、脳の扁桃体を過敏にし、不安感やイライラを助長します。
これらの変化は、長期間続くと不可逆的になる恐れがあり、早期の介入が必要です。
なぜゲーム依存が起こるのか?
脳には、ブレーキ役である「理性」とアクセル役である「本能」が存在します。ゲームやスマホなどのデジタルメディアは、本能を強く刺激し、理性とのバランスを崩します。この結果、ゲームの利用時間をコントロールできず、やめたくてもやめられない状態が生じます。
例えば、親が「スマホは食事が終わってから見なさい」と伝えても、子どもが食事を中断してまでスマホに向かうことがあります。これは、友達とのやり取りに遅れることで「置いて行かれる」という不安感が背景にあるからです。
家庭でできる解決方法
ゲーム依存への対応は、家庭での工夫から始めることが可能です。ただし、中毒の度合いが強い場合は、急激にゲームやスマホを取り上げることは避けてください。中毒であればあるほど、以下のような反応が出る可能性があります:
- 暴れる
- 家出をする
- 衝動的な行動をとる
これを防ぐためには、段階的なアプローチが重要です。以下の方法を実践してみてください:
- 生活リズムを整える:一定の時間に寝起きし、食事や入浴などの生活習慣を整えましょう。規則正しい生活が脳の安定化を助けます。
- スクリーンタイムを制限する:使用時間を事前に決め、タイマーなどを活用して徹底的に管理します。
- 家族で代替活動を楽しむ:ボードゲーム、読書、料理など、デジタル以外の楽しい活動を提案し、家族全員で取り組みます。
- 親自身の行動を見直す:親がスマホやテレビを長時間使用していると、子どもも真似をする傾向があります。親が率先して良い例を示しましょう。
- 子どもとの対話を大切にする:ゲーム依存の背景には、ストレスや不安が隠れている場合があります。日常的に子どもの話を聞き、安心できる環境を作りましょう。
- デジタルデトックスを取り入れる:休日にはスマホやゲームから完全に離れる日を設け、自然の中で過ごす時間を計画します。
自然療法セラピストが推奨するデジタルデトックス・キャンプ
ゲーム依存を根本から見直すために最も効果的な方法の一つが「デジタルデトックス・キャンプ」です。これは、日常生活のデジタル依存環境から離れ、非日常を体験することで、心と体をリフレッシュさせる活動です。特に以下のような内容を取り入れると効果的です:
- 火をおこす体験:マッチやライターを使わずに火をおこし、自然の力を感じる体験。
- 自分で食事を作る:簡単なアウトドア料理を楽しむことで、達成感を得ると同時にデジタルから離れる時間を確保。
- 自然の中で遊ぶ:ハイキングや川遊びなど、身体を動かしながら自然の中で楽しむ活動。
- 星空観察や焚き火を囲む時間:夜は静かな自然環境で星空を観察し、焚き火を囲みながらリラックスした時間を過ごします。
これらの活動を通じて、子どもたちは「デジタルがなくても楽しいことがたくさんある」ことに気づきます。また、親子で一緒に取り組むことで、家族の絆を深める絶好の機会にもなります。
親ができるサポート
ゲーム依存の背景には、子ども一人ひとりの悩みや家庭、学校でのストレスが隠れていることが多いです。親として重要なのは、次の視点を持つことです:
- 子どもを責めない:子ども自身が悪いのではなく、家庭全体の課題と捉える。
- 依存の原因を見つめ直す:子どもの行動を通じて、親自身が気づくべきことがあると考える。
- 生活を見直す:ゲームをただ止めさせるのではなく、上手に付き合う方法を模索する。
必要な場合の専門的支援
もし家庭での対応が難しい場合、2〜3か月の入院を通じて生活を立て直す専門病院も存在します。また、専門家のカウンセリングを受けることも有効です。
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子どもの行動問題に対して、カウンセリングと自然療法は有効な選択肢となります。家庭での対応が難しいと感じた場合や、より専門的なアプローチが必要だと感じた際には、ぜひご相談ください。お子さん一人ひとりに合わせたサポートを提案し、家族全体の安心と健康を目指してお手伝いいたします。
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